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ツリー

ツリー

キルアはときどき、ここではない別のどこかを見ているような目をする。

さっきもそうだった。

夕方、二人で調査をすました帰り道、ショッピングモールのそばを通りかかったんだ。
四季の有る国にいた。
冬だから日の落ちるのがはやくて、夜にはもう星が瞬いてた。
郊外にありがちな大型量産店だけど、季節が季節だからだろう。子供連れの家族でにぎわってた。

俺はつい、好奇心で色々なところで立ち止まっちゃうんだけど、キルアはなんだか今日に限って冷淡で、入り口の近くでキラキラ光ってるおもちゃとか、おいしそうに湯気を立ててる鶏肉とか、目もくれずにすたすたと歩いていく。

待ってよ、キルア、

背中に追いついた、そのときだ。
こんどはキルアが不意に立ち止まった。
勢い余って前のめる。
青い目が見上げていたのは、巨大なツリー。モ—ルの二階まで届きそうな、人造のもみの木。
派手じゃないけど、金や銀の球体、そして星屑を散らしたようなネオンにまぶされて、ほのかに光っていた。

わあ、すごいな。

俺はなんだか嬉しくなって、キルアに話しかけた。

キルア?

呼んでも視線が動かない。見ているのは、ツリー?それとも…。

——ああ。


一瞬の間があいて、我に返ったような顔でキルアがこっちをむいた。笑顔。

キルア、どうしたの?

え、別に。何も。

そして、ふと目を伏せて、あれ奇麗だなと思ってさ、と低くつぶやいた。

笑った顔が少しぎこちなくみえて、俺はついよけいな事を考えた。



キルアの目はときどき、目の前の物をみてなくて、もう今は過ぎた時間の向こう側を向いていることがある。

その時間に何があったのか、俺は知らない。知りようも無い。




ある人間の、何気ない会話の中でさりげなく回避されている思い出がどのくらいあるかなんて、他人には想像もつかない。いや、話してる本人にだってもうわからないのかもしれない。普段は忘れているけど、ふとしたはずみに意識の表へと浮き上がってくる何かのことなんて。



——さぁ、昔の事とか、もうよく覚えてないし。
キルアはよくそういって、なんでも笑い飛ばすのが好きだ。
最近特にそうで、ちょっと過剰なくらいに感じて、正直気になることがある。
だから別にどうとかいうわけじゃない。俺に何か出来るわけじゃない。
だいいち、単なる思い過ごしかもしれない。

けど、ただ、どうしても、どきりとするんだ。



雰囲気変えたくて、ああいうのうちに欲しいね、と言ってみた。
バーカ、どこに置くんだよ、と即座にいつもの調子で返事が返ってきて、
俺はなんだかほっとした。


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キルアがショッピングモールにいて、安いツリーのネオンをぼんやりみてるシーンが書きたかっただけ…
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