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【評論もどき】カヲルの系譜

本当は日記に載せようと思った文章なのですが、ジオログの文字容量を遥かに超えてしまったのでこちらにうpします。これから、ちょっとくどめの評論ぽい文章はこっちに上げていくようにしようかなとも思ったり…。



突然萌えあがり、妄想漬けになった脳みそで「カヲルというキャラの系譜」なるものを(ネット検索レベルで)探ってみました。

言っておけば、定説はありません。本人達がはっきりと明言してないみたいなんで。
名前の由来は庵野監督の公式HPおよびwikipediaにありますが。

また、当然インスピレーションの元は一つではないでしょう。今日はとりあえず、渚カヲルというキャラの原イメージを作ったとして候補に挙がっているものの一つ、「1999年の夏休み」(1988)という映画(あらすじはこちらのページ)関連で、系譜を辿ってみたいと思います。


まず、「1999年の夏休み」には

・舞台設定が湖の側(軽井沢辺り)、しかも季節は夏
・「薫」という転校生が出てくる
・薫と瓜二つの少年、悠が主人公の少年、和彦を好きになり、湖に身を投げて自殺している
・薫もやはり和彦を好きになる。
・台詞回しがとても舞台っぽい。耽美で文学的
・音楽室で和彦がバイオリンを、直人がチェロを、則夫がピアノを、それぞれ弾くなどというシーンがある(→24話ではないが、エヴァ映画映像)

という特徴があり、エヴァの第24話のイメージに重なります。(なお、この作品では少年達を全員少女が演じています)
ということで、これがカヲルというキャラのイメージに対する「直接のインスピレーション元」としての有力候補。

しかし、実はこの作品自体が更に別の作品のインスピレーションを受けています。
それが、萩尾望都の「トーマの心臓」。登場人物はほぼイメージが重なります。あらすじはこちら
例えば、映画「薫」のモデルはエーリク・フリューリンク(栗毛)。そして、瓜二つの悠はトーマ・ヴェルナー(金髪)。そしてそのトーマに愛され、トーマにも似たエーリクとも対になる少年がユリスモール・バイハン(以下ユーリと呼びます)といいます。ちなみにユーリは黒髪です。

従って、もしも「1999年…」が第24話の直接のインスピレーション元であるならば、トーマの心臓はまあ、その一つ前というか、間接的なインスピレーション元ということになります。
そして、性格設定等を別にすれば、カヲルというキャラは薫と悠、またはエーリクとトーマを足して割ったような立ち位置ということになりますね。特に「トーマの心臓」の方はトーマの自殺が一種宗教的なまでの自己犠牲という要素を孕んでますので、カヲルの振る舞いと重なるところがないでもありません(動機は全く違いますが)。

…と、思っていたら、更に興味深い指摘をこちらのページで拝見しました。それによると、貞本エヴァの10巻、件のキスシーンはトーマの心臓にあった、エーリクとユーリのキスシーンを彷彿とさせるというのです。なるほど…!
シチュエーションは同じではないのですが、確かに類似性があります。というのも、トーマの心臓のエーリクには今でいえばパニック症候群(「神経症」と呼ばれている)の傾向があるのです。ちょうど貞版シンジの過呼吸症候群のように。
ただし、エーリクの場合はキスされるとパニックに陥って失神しかけるという(こう書くとギャグですが(笑)、実はこれ深刻なトラウマに起因してるのです)人なので、二人のキスシーンの経緯は少し異なりますが。というのもエーリク×ユーリの場合は、母親の死に動揺して我を忘れたエーリクを大人しくさせるため、ユーリ(黒髪)の方がからキスするんです。

貞さんがあの話を書くにあたって、萩尾望都をはじめとする24年組系列の漫画を読んでいてもおかしくありません(というか教養としてあらかじめ知っていて当然ではあるので、ここは描くにあたって「改めて読む」くらいの意味です)。
となると「トーマの心臓」は二重の意味で渚カヲルというキャラの造形に影響を与えていると考えてもいいのかもしれません。恐るべし24年組。

なお、蛇足ですが、「1999年の夏休み」にインスピレーションを得てsummer holiday 1999という歌を作ったmomusというスコットランド出身の歌手がいます。歌詞は「禁じられた愛」「死への衝動」など、物語を彷彿とさせます。ただし舞台は北海道なのですが。
「インスピレーション元=親」という比喩が許されるとすれば、この歌はエヴァの渚カヲルといわば兄弟のような関係にあたる存在かもしれません。または、トーマの心臓の直系の孫にもあたりますね(笑)歌詞はこちらのリンクでご覧になれます。


【追記】
「トーマの心臓」自体はフランス映画、Les amitiés particulières(邦題「哀しみの天使」1963)に影響されてるという説があるそうです。なお、同映画は更に20年前に書かれたRoger Peyrefitt作、Les Amitiés particulières (1944)という同タイトルの小説に基づいています。R. Peyrefitt(1907-2000)は同性愛者…というよりも、少年愛者だったようです…。「子羊は好きだけど羊はダメ」だったんだって。うーん。
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