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「カヲルくん、ごめん。待った?掃除当番長引いてさ。」
「いや、そうでもないよ。うちはHRがちょっと長かったから。」
学校の帰り道。いつも通り、下駄箱で彼と待ち合わせる。何となく友人。家が近いから部活の無い水曜日、よく一緒に帰る。ついでにいえば同じ部活、放課後音楽室で演奏なんかしたりもしてる。
「いや、そうでもないよ。うちはHRがちょっと長かったから。」
学校の帰り道。いつも通り、下駄箱で彼と待ち合わせる。何となく友人。家が近いから部活の無い水曜日、よく一緒に帰る。ついでにいえば同じ部活、放課後音楽室で演奏なんかしたりもしてる。
「今日は天気がいいねえ。」
空を仰ぐ彼の瞳、陽光に透けて赤い。不意に僕は鞄の中に入れたものの事を思い出す。
「あ、これ、また頼まれた。」
「何だい?」
「見ての通りだよ。ラブレター。うちのクラスの女子から。」
「ああ…どうも。」
「相変わらずもてるね!羨ましいよ。」
さあ、どうなんだろうね、と彼が気の抜けた声を出し、僕は手紙を差し出す。可愛い色をした、僕には何処で売ってるのか見当もつかないような封筒。
彼が受け取ろうとして僕が手を離したときちょっとだけ指が触れた。目が合って、先に彼が視線を反らす。
「そういえば、今度新しい曲の練習始めたんだ。」
何気なく違う話題をふりながら、僕は彼を見る。
明るい色をして光に銀色に透ける髪。抜けるように白い肌。
「へえ、今度は何だい?」
「G線上のアリアだよ。」
「それ、僕も弾けるよ。チェロのパートが綺麗だよね。」
「じゃあ、もうちょっとうまくなったら言うよ。合奏しよう。」
見つめる僕の視線に、真っ直ぐ前を向いた彼は気づきもしない。だからついろくでもない方向に考えが巡る。
僕より広い肩幅、半袖からのぞくしっかりとした骨格の腕。大きな手、長い指。
(…あの手で触られるのって、どんな感じかな。)
だけどその一方で———透き通るように白い額、どこか華奢な頬から顎にかけてのライン。
ぼんやり見てたら風が吹いて、彼は乱れた前髪をうるさそうにかきあげた。
一瞬だけど、悩ましそうに眉根をよせたその表情に……魅せられる。
(…………めちゃくちゃに、したく、なる)
(いや……されたいのかな)
(わからないや)
でも知らないだろ。僕がこんな事考えてるの。
ほら、またそんな曇りの無い瞳で前を見て笑ってる。
気づけよ、こっち見ろ。
振り向けよ。僕の方に。
他の誰かのものになんて、なるな。
————なーんてね。
…と思ったら、カヲルくんは本当にこっちを向いた。
んでもって、
「何だい?どうかしたのかい?」
とか訊いてくる。
居心地悪いのは僕の方。慌てて、
「え、別に。」
と言ってしらを切って口ごもった。
多分今、顔が赤い。
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