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パーティは終わらない

グリエンパラレル。"Life is beautiful"と同じシリーズで続いてます。エドがウィンリィを彼女にしてるノンケの男の子として冒頭にちらっと出てきます。苦手な方はご注意下さい。
「じゃあナ、エンヴィー。今日は楽しかったヨ。グリード、ごちそうサン。」

「おおまたな。」

「ほんと、あんたのメシ旨かったぜ。あ、そうだ。エンヴィー学校ちゃんと来いよ!お前来ねえと俺たちのグループの課題遅れるんだからな。」

「えー、まだだいじょうぶでしょ。担当箇所家でやっとくよ。」

「だーめだ。そういうことだからお前は!」

「もーうるさいなあ、おチビさんは。」

「チビ言うな!チビと!」

「ちょっと、あんたこそ、そろそろ終電の時間あぶないんじゃないの?帰れなくなるわよ。」

「ああ?そんなんいざとなったら歩きだよ。」

「でもお前の家ここからだいぶ遠いよナ…。郊外だロ?」

「無理して帰んないで、ウィンリィちゃんちに泊めてもらえばいーじゃん。ど~せラブラブなんだからさぁ。」

「うるせぇよ椰子頭。」

「言ったなドチビ。」

「もう、ホントに遅れるわよそんなことしてると。グリードさん、どうもありがとうございました。エンヴィー、ありがとう。楽しかったわ。」

「それでハ。」

「おう。気をつけて帰れよ。」

「うん、また来てね、ウィンリィちゃん。リン。あ、エドも。」


土曜の夜、時計は零時を少し回ったところだ。賑やかな奴らが帰って行ったあと、二人だけになった部屋は急に静かになる。エンヴィーが微かにかかっていた音楽を止めて言った。さて、片付けるか。

用意した食い物はかなりな量だったが、気持ちいいくらい何も残ってない。特にあのリンとかいうチャイニーズが見事な食いっぷりだった。
食い散らかした皿やら食器やらを二人で台所に運ぶ。

しかしエンヴィーのヤツは、ちょっと動いたかと思えば台所から出てこない。俺が煮込み料理に使ったタジン鍋をはこんできたら、ふうと流しにより掛かるようにして、ぼんやり暗い窓の外なんか眺めてる始末。相変わらずつかえねえ。

「おい、俺に殆ど作らせやがって。片付けくらいちゃんとやれよ。」

うん、と生返事。どうしようもねえな、と俺はまた皿を取りに行こうとした。すると後ろから呼ばれる。

「あ…グリード。」

「何だ。」

「いや、まあ、その…さ、」

しかしやつはもごもごと口ごもり、何かをごまかすように鼻をかいて笑った。先ほどの楽しい空気の余韻を残してか、頬がまだ上気している。

「だから何だよ。」

「えーと、その…ありがと。」

「あ?」

「夕食会だよ。…あんたのおかげで開けたなって思ってさ。」

うつむいて微かに笑みを浮かべ、満ち足りたような表情をする。何だ?かわいいじゃねえかと一瞬思ったが、騙されてはいかんと気を引き締める。

「ま、まあ、確かに俺がいなきゃあんなまともな食事は出来ねえな。」

「悪かったな…!でも、それだけじゃないんだ。こういうパーティ、本当に前から開きたくてさぁ。」

「学校の友達を家に呼んで、ってやつか?はっはぁ、あこがれの留学ライフとやらに少しは近づいたか。」

今日来てた奴らは基本的にエンヴィーの学校関連の知り合いだった。確かに半年前までこんな企画はあいつには到底無理だっただろう。エンヴィーは一年前パリに来たのだが、留学生活の出だしでつまづいていた。
俺と出会った頃はそのどん底で、街で財布は盗まれるわ、当時住んでた場所の大家とトラブるわ、学校でも友達はなかなか出来ないし語学力のせいで授業もちゃんとついていかれずで、とどめがどこぞの誰かとの大失恋。それで一時は「生きる気力すらなくしかけてた」のだという。まぁ何でも大げさに言う傾向のあるヤツだから何割か差し引いて考える必要はあるが、確かにうちに転がり込んできたころかなり荒れて無軌道な生活ぶりだったのは事実だ。

当時を思い出したのか、エンヴィーもはにかんだ顔で笑い頭を掻く。

「うん、それもあるけどね。それだけじゃなくてさ。」

そうか、と生返事をして俺は残りの皿をとりにいくため台所から出ようとした。
すると、グリード、と呼び止める声。振り向くと、無言で俺の胸にもたれかかるようにして腕を回してくる。

「何だ、どうした。」

反射的に背を撫でようとして、指にソースがついていることを思い出しやめた。胸に頬を押しつけて、くぐもった声が答える。

「あのさ、聞いて欲しいことがあるんだ。」

「…何だ。言ってみろ。」

「前に、こっち来てからすごい失恋したって言ったじゃん。」

「え、ああ。フランスでの最初の本気のレンアイが何とやら、か?」

一見遊び好きで移り気な印象のあるエンヴィーだが、実は本気になると情が深くのめりこむタイプだった。
相手は、うんと答えたあと、次の言葉を探すように少し沈黙する。そして、言った。

「あれ実は……さっき来てたあのエドのことなんだ。」

「えっ………そうなのか。」

流石に一瞬絶句した。金髪のエドワード・エルリック。ついさっき笑って階段を下りていったヤツの姿がリアルに脳裏に浮かぶ。

「おま……それ、先に言えよ!」

いや、別にだからどうとか、俺が気にすることではないのかもしれんが。だいたい向こうも彼女と来ていなかったか?

「だって、先に言って気まずかったらいやじゃん。」

「後からいきなり聞かされるってのも変な気分だぜ。」

「…ごめん。怒った?」

「いや、怒っちゃいねえが…このタイミングでいきなり聞かされると驚くだろ、普通。」

「そうだよね…ごめん。本当はもっとずっと前に言おうと思ってたんだけどなかなか言い出せなくてさ。」

エンヴィーは溜息をついて少し体を離した。何かを思い出すような目をしている。俺はソースのついていない方の指で髪を撫でてやった。相手は薄く笑い、ぽつりぽつりと話し出す。


エドワードはパリに来て間もないエンヴィーが最初に知り合った友達だったらしい。学校の同じ専攻で最初の授業の日に席が近かった。カナダのフランス語圏にいたとかで、言葉がおぼつかないエンヴィーを最初の頃よく助けてくれた。そのうちに家族のこと、一時期歩けなくなったことがあるとか、将来の夢だとか、あくまでも友達としてだが深い話や身の上話もするようになり、みるみるうちにエンヴィーの方はエドワードに惹かれていった。相手はストレートだとわかっていたのに、毎日顔も合わせるし、まずいことに顔も性格も好みだった(エンヴィーはブロンドが大好きだった)。身長が低いのは残念だが、それすらも恋わずらいが重症になってきた頃にはふとした機会に相手をからかったり会話のネタに出来るから嬉しいくらいだったという。

……言い換えれば、からかって好きな子の気を引くくらいしかできない思春期の男子のような状況に陥っていたということだ。
そしてある日ついに募る想いに耐えきれず玉砕覚悟で告白をし……見事に玉砕したということらしい。

「ふり方がまた残酷でさ。何て言ったかと思う?『他に好きな奴がいるから、ごめん』って言うんだよ。」

「いや、ありがちじゃねえか?ごく普通の理由だと思うが…。」

「わかってないな~。全然普通じゃないって。だって相手はストレートなんだよ?『俺、男はだめなんだ』とかさ、大抵は先にその台詞が来るじゃん。」

「そうか?人によると思うがな。」

「…ま、とにかくさ、ストレートだから無理とか男はダメとか真っ先に言われたら、こっちもそんならいいやって思うわけ。何だこいつ、やっぱ自分は違う人種って思ってるんだなとか、最初から別扱いかぁとか。何かさぁ、上手い具合に自分をふった相手に幻滅できる感じがするんだよ。こういうやつを好きでいても仕方ないなって思えてきて、忘れるのも楽になるっつうか。」

「その感覚、俺にはさっぱりわからんが…」

「うーん、とにかくさ、『好きな奴がいるから』って言われちゃうと、かえって自分が相手に、すごくちゃんと扱ってもらえてたような気がしちゃうんだよ。あ、俺、ひょっとしたら相手の恋愛対象ゾーンに入ってたのかもって思って、そこで一瞬幸せになっちゃう。でもその後すぐに突き落とされるんだ。だってさ、やっぱエドが女の子好きなのは明白なわけだから、嘘なんだよ。俺とその子は平等な競争で選ばれたり負けたりしたんじゃないんだ。でもいいやつだからさ、俺のこと『対象外』って言えないんだ。真剣に考えて『ごめん』って……その辺の気遣いがさ、無茶苦茶苦しかった。だけど同時に、やっぱいいやつだなあって思うからすぐにふっきれなくて…」

「…要は罪作りなヤツってことか。で、学校に行けなくなった、と。」

「まあそういうことだね。」

それにしても何で俺がここで長々と、こんな過去の話を聞かされねばならんのだ。
だがそうは思いながらも、ふとエドワードの顔が浮かぶ。ちょっと話しただけだがわかった。あれは物事に囚われない考え方の出来るヤツだ。色眼鏡をかけずにまず人を真っ直ぐ見る。その上で己で判断できる。相手の立場を考えながら気遣いも出来る。背はちいちゃいし、けんかっ早いしで俺から見ればまだまだガキだが、既に懐の大きさを感じさせるところがあった。こいつもそこにぞっこん惚れたのだろう。

エンヴィーが顔を上げ、笑う。青みがかった紫の瞳が流しの側の照明灯を移し込んできらりと光った。不意に思い出す。ストレートにばっかり惚れるんだよ俺、最悪だ。いつだったかそう話していた。報われない恋か、身体目当てのヤツとの遊びばかり。だから、こんなまともにつきあったのはあんたが初めてだ。そうも言われた気がする。

ヤツは俺から少し体を離し乱れた髪をかき上げた。そしてまた遠くを見るような目をする。

「…で、久しぶりにエドと会って話したら、彼女が出来たって事ちゃんと言ってくれたんだ。だから、俺も彼氏が出来たって話してさ。そしたらよかったって言ってくれたんだよ。」

「本当に喜んでくれるんだ。だから何か俺も……同じように喜べるといいなって思ってさ。だから、今度うちに食事でもしに来いよって誘ったんだ。俺の彼氏紹介するから彼女もそのとき連れてこいよって。会ってみたかった。学部が違うから全然知らない子だったし。」

「それでもずっと心配してた。ほら俺って嫉妬深いからさ、そんなこと言って、エドと彼女といるのを見るとやっぱり自分が惨めになったりするんじゃないかとか、変な心配してた。」

そこで一端息をついた。気持ちを整えようとするように深呼吸をして、微笑んだまま目を伏せる。

「でも会ってみたらすごいいい子で、エドも…幸せそうで、本当によかったって心から思えた。…思えたんだ。」


その顔はとんでもなく真剣で、こみあげる強い感情を映すかのように視線が揺れた。
冷静に経緯を考えれば俺は単にこいつの仲直りに利用されただけのような気もするが、その様子につい何も言えなくなる。
しかも何か心なしか目が…潤んでねえか?いや照明の加減のせいか?

エンヴィーが言った。

「黙ってたことは本当にごめん。でもありがとう。」

「…何だ、そんな改まって言うようなことか。」

本当に感謝しているんだ。小さくつぶやいた。それと、と口ごもる。

「……愛してる。」

エンヴィーがそんなことを言うのは多分、初めてだった。一瞬、俺は雷に打たれたように言葉を失う。


が、そのあとがあった。
こっちがリアクションする前にヤツはみるみる真っ赤になり、うわぁぁ、と妙な声と共に頭を抱え身をよじり出したのだ。

「な、何だ、今度はどうした。」

「…この流れ、何か超恥ずかしい…。」

「あ?」

「愛してる、なんて俺のキャラじゃない。しかもあんた相手に…。恥ずかしい。ああ、ああ…。」

台所の壁に頭をすりつけ悶絶している。

「『しかも俺相手』、だと?さり気なく失礼な…。」

「だって愛の告白されるキャラじゃないだろ、あんた。男も女も両脇に抱えてガッハッハとかやってるのがお似合いの単細胞でさぁ。ああ、こんな男に…今とんでもない純情を捧げた。畜生、恥ずかしい…。」

「…お前、やっぱり失礼だな。オイ。」

「恥ずかしい……でも、」

不意に言葉に詰まったかのように押し黙る。

「でも、何だ。」

訊いても答えず、左手を壁につき右手で顔を覆うようにしたまま動かず数十秒。その後、ぽつりとつぶやいた。

「……………会えてよかった。あと……生きててよかった。」


全くこいつというヤツは。

近寄って後ろから肩を抱く。ぴくりと痩せた背中が反応した。何を言ってやろうかと考えたが、いまいち思いつかない。口から出たのはどうしようもなく平凡な台詞だった。

「ま、そんなら、何よりだ。」

「……ん。」

のぞき込んだエンヴィーの頬はまだ赤い。その目尻には光るものがあった。
でも俺を見上げてにやっと笑う。涙目のくせに、白い歯を見せていつものように。何か見てるこっちの胸が痛ぇような満面の笑顔。余計言葉が見つからなくなった。

だからキスした。











「グリード、先に寝てなよ。片付けはやっとくよ。料理はほとんどそっちに頼っちゃったしさ。」

皿洗い機を開けて皿を並べ始める。時計はもうすぐ一時。
てきぱき動く後ろ姿に、そういえば同居し始めた最初の頃からはあまり予想出来ない姿だと昔を思い出す。まだその頃は単なる同居人だった。
当時はよくケンカをした。俺はあまりあれこれ言いたくない方だが、それにしても当時のエンヴィーはやたらとだらしがなかったのだ。まともに料理しねえどころか、そもそも皿をろくに使わない。レトルト食品を食い散らかしたゴミは一週間くらい平気で流しに放置。当然部屋はゴミ箱同然。昼夜逆転生活で学校に行ってる様子もなかった(そのために留学してるのにだ)。しかも夜遊びに出るたび、夜中にでかい音でドアを開け閉めしたり階段を駆け下りたりで階下から苦情が来ることもしばしば。一度など泥酔して帰り、付き添ってきた男と建物の前で大喧嘩しだして近所大迷惑。警察を呼ばれてしまった。俺もたたき起こされるし、思い出しても本当に最低だった。あんときゃ本気でこいつ追い出そうかと思ったぜ。

生活の基本的なことがメチャメチャになってるっつうか、とにかく荒んだ雰囲気だったな。バランス悪りぃ、不安定なヤツだなどうしようもねえなって思ったもんだ。

だが今から思えばあの頃、辛かったって訳だ。なるほどな。


「生きててよかった」………か。


死にそうな目してたな。何もかもどうでもよさそうな、それでいて誰かに助けてもらいたがってるみてぇな。とにかく、何かに必死なのはわかった。それだけは伝わってきた。だが助けてとは言わなかった。ただ一人でもがいてる、そんなふうだった。


それが今は、こうして二人並んでる。
まったく人生ってぇのは、奇妙なもんだ。





「おい、それ明日でいいぜ。」

ヤツが皿洗い機に入りきらない鍋を洗い始めたとき、押しとどめた。

「えー、でも明日起きてやるのダルいじゃん。」

「明日にしろって。水音うるせえし。」

「すぐ終わるよ。疲れてんなら先に寝てていいって。やっとくから。」

「ダメだ。」

「はぁ…?って、おい、何、ちょっと邪魔………」

「……………。」

「あ、そういうこと。」

「イヤか。」

「…わけないじゃん。」

「そうこなくちゃな。」





俺たちのパーティはまだ、始まったばかりだ。






あとがき

「タジン鍋」を使った料理はこんな感じです。
http://www.hayakoo.com/tajine-de-poulet-aux-pruneaux/

私は作ったことありません。スイマセン(汗

ところでエドはノンケ(ストレート)ということになってますが、実はエンビが知らないだけで故郷にいた頃は先輩のロイとちょっと色々あった云々…とかだったら面白いのにーと思ってます。ええもうすっかり腐ってます。はい。(2010/2/28)

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