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残り香

ゴンキルってのはうそだろー(笑)



夜が、本当に深いんだ。

どこまで行っても終わりそうにない。


この国のやつらは俺みたいな外見したガキがおかしいくらい好きで、50メートルごとに話しかけてくる。振り払うのも面倒だから、薄く笑ってとりあえずかわす。

でもだんだん飽きて疲れてきて、ぼんやり見上げた先に黒い目、笑顔、刈りそろえた黒髪。
年あんま変わらない。外見悪くない。
この辺で、ついていってもいいかって思った。


惹かれたのは、ふと気配に漂った煙草の残り香。
普段は誰にでも外で吸えよなんて言うくせに、こういうときだけは別。




顔を埋めた首筋に口づけ目を閉じる。
夜が更に深くなる。


一瞬、ほの暗い闇、記憶の底、
誰かの顔が浮かんで消えた。



全てから遠い夜、お前が一生たどり着けないような場所で、今日もこうして生きてる。

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真昼の広場

「下がって下がって。」
真昼の広場は慌ただしかった。

「何?」
「殺人事件だってさ。」
「えー、マジで。」

詰めかけるマスメディア、張り巡らされたテープ、警官と検死官達。
その一角にある豪華なホテルで遺体が発見されたのは午前10時。
被害者は財界でも名のある大富豪だった。この国の政府要人と会談に来ていたところを殺害されたのだった。

「あのホテルって、守衛とかいるんだろ?従業員の仕業かな。」
「まずいよね。こんなことあって、客来なくなるんじゃない?」

俺は見てた。最前列で、見てた。そしたら、
「はいはい、下がって。下がって。」
ひょろ長い顔した警官にぐっと押しのけられて、ちょっとムカついたから睨んでやった。

「こら、乱暴だぞ、子供が居るじゃないか。」
その後ろから更に、低く落ちついた声が聞こえた。
こいつらのボスだな。

「あ、警部。はい。」
制服じゃなく背広を着たおっさんの前で、ひょろ長野郎がかしこまる。

小物は眼中に入れず、俺はそいつをじっと見た。
広い肩幅、厚い胸板。適度な年輪を刻んだ、だがまだ若々しい容貌。
そして、褐色の肌。
南の方から来た移民の子孫とすぐにわかった。ここまで上り詰めた奴を見るのは、この国では珍しい。大抵は場末のスラムに押し込められて、掃除夫かさもなきゃ失業、よくて麻薬売人くらいしか仕事ないって言われてるからだ。

偏見と差別に耐えて、のし上がったんだね。
いい学校も出てそうだ。
そして、何より有無を言わせぬ風格がある。

はは、かっこいいじゃん。
正義の味方ってか。

でもおっさん、悪いな。今回ばかりはこの事件迷宮入りだよ。


だって、そいつ、

…俺が殺したんだもの。







お昼ご飯の後片付けしながら、ラジオを聞いてた。
ミトさんが何となく音楽が欲しいって、いつものお気に入りの局をつけてそのままになってたんだ。
お皿を運んで、ミトさんが洗って、俺が白い大きな布巾でふいてテーブルに重ねる。

そのとき、のんびりとした音楽が不意に途切れ、ニュースが始まった。
きょうみないや、と思ってチャンネルを変えようとしたら、

「…国の首都中心部、歴史的な高級ホテルで猟奇的殺人事件が起きました。」
「被害者は世界的にも有名なロートキンデグループの総帥…」
「遺体は胸部に穴があいており、検死の結果から心臓が完全に取り除かれていることがわかりました。現場から凶器らしきものは見つかっていません」
「犯人は未だ見つかっておらず逃走中です。世界で最も治安のいい都市の高級ホテルで起きたこの猟奇的犯罪に、世界中の関心が集まっています。」

海の向こう、遠い外国の話だった。

「やだ、気持悪い。心臓を取るって…。すごい話ね。」
「…うん。」
「外国はやっぱり物騒ね。」
「うん…。」
「…どうしたの?ゴン。」
「どういうことを考えるのかな。」
「え?」
「犯人は心臓をとるとき、何を考えてたんだろ、って思って。」







真昼の陽光の中、俺はそいつを見上げていた。
男は俺の側に立ったままチョコレート色の額にうっすらを汗を浮かべ、横の部下に歯切れのいい口調でてきぱきと指示を伝えている。


知ってるか、おっさん。
俺がぶっ殺したそいつ、極右につながってたんだぜ。
あんたやあんたの同胞みたいなやつら、この国から全員追い出しちまいたいって思ってるやつらに金出してたんだ。次の選挙で勝ってくれるようにってさ。
裏の事情に通じてれば誰でも一度は聞いた事あるネタ。
そのくらいあんたも知ってんだろ。

だけど仕事だもんな。
殺しの犯人捕まえる方が警官にとっちゃ大事。
仕方ないよな。


俺もそう。これ、仕事だからさ。
何つっても、プロだからさ。
(今回の依頼は当然極右云々と無関係だけどね。)


ふと、男が俺の視線に気づいてこちらを向いた。
そして少しだけ微笑んだ。

まるっきり俺をガキ扱いして、何の警戒心もない笑みを向けやがったんだ。

口元からのぞいた整った歯並びが白くて、黒い目が俺を映してた。


急に、太陽を眩しく感じたのは何故だろう?


俺は思わず目を伏せた。




ツリー

ツリー

キルアはときどき、ここではない別のどこかを見ているような目をする。

さっきもそうだった。

夕方、二人で調査をすました帰り道、ショッピングモールのそばを通りかかったんだ。
四季の有る国にいた。
冬だから日の落ちるのがはやくて、夜にはもう星が瞬いてた。
郊外にありがちな大型量産店だけど、季節が季節だからだろう。子供連れの家族でにぎわってた。

俺はつい、好奇心で色々なところで立ち止まっちゃうんだけど、キルアはなんだか今日に限って冷淡で、入り口の近くでキラキラ光ってるおもちゃとか、おいしそうに湯気を立ててる鶏肉とか、目もくれずにすたすたと歩いていく。

待ってよ、キルア、

背中に追いついた、そのときだ。
こんどはキルアが不意に立ち止まった。
勢い余って前のめる。
青い目が見上げていたのは、巨大なツリー。モ—ルの二階まで届きそうな、人造のもみの木。
派手じゃないけど、金や銀の球体、そして星屑を散らしたようなネオンにまぶされて、ほのかに光っていた。

わあ、すごいな。

俺はなんだか嬉しくなって、キルアに話しかけた。

キルア?

呼んでも視線が動かない。見ているのは、ツリー?それとも…。

——ああ。


一瞬の間があいて、我に返ったような顔でキルアがこっちをむいた。笑顔。

キルア、どうしたの?

え、別に。何も。

そして、ふと目を伏せて、あれ奇麗だなと思ってさ、と低くつぶやいた。

笑った顔が少しぎこちなくみえて、俺はついよけいな事を考えた。



キルアの目はときどき、目の前の物をみてなくて、もう今は過ぎた時間の向こう側を向いていることがある。

その時間に何があったのか、俺は知らない。知りようも無い。




ある人間の、何気ない会話の中でさりげなく回避されている思い出がどのくらいあるかなんて、他人には想像もつかない。いや、話してる本人にだってもうわからないのかもしれない。普段は忘れているけど、ふとしたはずみに意識の表へと浮き上がってくる何かのことなんて。



——さぁ、昔の事とか、もうよく覚えてないし。
キルアはよくそういって、なんでも笑い飛ばすのが好きだ。
最近特にそうで、ちょっと過剰なくらいに感じて、正直気になることがある。
だから別にどうとかいうわけじゃない。俺に何か出来るわけじゃない。
だいいち、単なる思い過ごしかもしれない。

けど、ただ、どうしても、どきりとするんだ。



雰囲気変えたくて、ああいうのうちに欲しいね、と言ってみた。
バーカ、どこに置くんだよ、と即座にいつもの調子で返事が返ってきて、
俺はなんだかほっとした。


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キルアがショッピングモールにいて、安いツリーのネオンをぼんやりみてるシーンが書きたかっただけ…

太陽の

横を通り過ぎたとき、
乾いた陽差しの匂いがした。

自分とえらく違う存在に触れた気がして不愉快になった。

きっとこいつは、朝焼けの憂鬱さを、一日の始まりの呪わしさを知らない。



陽光の恵みを浴びた肌が疎ましい。
微塵も影を帯びないその眼差しも。
閉じた瞳の下、きっと思い出すのは故郷の青い海と緑の木立。


じっと見てたら目が合った。
なんか言うかと思ったら、
向こうも黙ってこっちを見てる。
好奇心?警戒心?

黒い瞳の裏側が意外に読めなくて、微かに狼狽したのは自分。

そしたら相手が突然、
キルアの瞳ってほんとに青いんだね、
たったそれだけのことを言って、
ためらいも無く笑った。

焼尽


焼尽




なぁ、ゴン

俺たちの生き方って、何だろ


その一瞬一瞬に全てをかける
待ち構えるものや
残すものものことを
考える暇も無く

挑戦
最適化
覚悟
決戦


昨日も今日も
そして明日もずっと
走り続ける
疾走感

どこまでいけるんだろ
この先
何が有るんだろ

行き先なんて知らない
ただ、
燃え尽きるまで輝ければ
それでいい




(遥か昔から
俺やお前が生まれるずっと前から
繰り返されてきた道程
数知れない戦士の屍
真剣勝負のその一瞬
記憶の火花が咲いて散る)





生むため、育むため生きる者もいれば
輝き散るため生まれた者もいる
例えばお前のために駈けた
この俺のように

それが俺の選んだ道ならば
どうして後に戻れるだろう



たとえ最後、
息絶えるその瞬間に
お前が側に居なくとも

明け方に、夢を見た。
ゴンがこちらに背中を向けてキッチンの流しに立ち、横のミトさんと話してる。
俺は側のダイニングテーブルに座って、少し離れたところからそれを見てる。
二人が何を話しているのかは聞こえない。
無声映画のように、音が無い。
ただ、夕陽のような光だけが周囲に満ちていて、後ろ姿の輪郭がにじんでいた。

座ったまま、動けなかった。
立ち上がって数歩踏み出せば届く距離なのに、光が半透明の膜になって、楽しそうな二人と俺を遮っていた。
ああ、あそこには行けないんだな、それだけが何故かわかっていた。
だから黙って見てた。

沈み行く太陽の最後の煌めきがどんどんまぶしくなって、寂しさが空気を満たした。
だけど不思議と心は穏やかだった。

本当に、静かな気持ちだった。
いつかあいつと見た、晴れた日の凪いだ海のように。

森の中

森の中で

もし俺がここで死んだら
お前はいつそれを知るのかな
こんな深い森の中で
二人遠くはなれて



電話はもう随分前から通じない


体温が落ちてく
寒い

ごめん
役に立てなかった

(一面の赤、霞む視界)


ここは寒い
本当に寒い


俺はもうすぐ

いなくなるかも
しれな、い


めぐる言葉
映像
走馬灯
お前の、笑顔


消滅の予感

どうして
こんなにまで
伝えたい?

———お前に


(それは最後の自己主張)
(妄執)
(相手の記憶に鈎爪を立てるように)

(でも力つきて、むなしく滑り落ちる)


もうすぐはじまる不在
こわばる指


ここは戦場
ありふれた悲哀

ああ、
光が
まぶしい

Glare

Glare


Since then
What an enormous distance has separated us
You see, my dear friend ?

I remember your bright eyes
The softness of your lips
Trembling, hesitating with all the emotion which filled you up
That day, far away from here, on this sea side bluff under the setting sun

The last word you gave me
Has been suspended in the air
Without reaching me



No.

I know why
It is me who erased it
From my memory

(forgotten,
vanished
remained absolute nothingness)


Ah since when you stopped existing

From the moment when I saw your body
Ripped
Mangled
Destroyed

By my proper hands


It's always been here that I come back

Here, the very place I did it
Here, I hear always winds and waves broken on the rocks
Far below my feet


All of these noises, filling the space, blue and empty
Are like your whispers in my ears


Tell me....

In spite of the distance,

Are you still waiting for me there ?


(a voice, weak and sweet, comes up and says, from the darkness:


yes my dear
it's always you whom I'm waiting for
here, far away from you
on the other side


come

put your step ahead in the air
to come down in the narrow way which leads to me



free yourself from your body

from your memory
and
your sorrow


you know what ?

murderer,


........I loved you )



A last glare of the sun set

Blowing wind
Crashing waves


Then comes the silence


To erase all trace of me from this world