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雑念手帳

サイトの日記ですが、同人サイト訪問者様用に公開されたJUNK妄想雑文メモ置き場兼ねてます。「何となくこのキャラのイメージで出てきた妄想だけど限定はしない」系の小説未満な小話がごっちゃりです。

遠くへ
ハンターに国境は無い。

大抵の国に入れる。ビザの申請も必要ない。ライセンスが全てを解決してくれるからだ。何かの本にあっさりそう書いてあったけど、これってすげえ事だ。

もっととんでもねぇのが、金だ。このカード一枚の信用で、巨額の融資を受けることができる。

初めて会員証に触れたとき、手が震えた。ついにここまで来たと思った。こんなモンを俺が手にする日がくるなんて、思わなかった。
医者になる、と思ってハンター試験に志願したのも勢いみたいなもんだった。
そしてついに俺はその夢への第一歩を踏み出したってわけだ。



あれからもうどんくらい経っただろうか。
かなりギリギリだったが、猛勉強の末俺はついに医大に合格した。

入ってから後は結構順調で、ヒーヒー言いながら期末試験もクリア。まだ学生だが、ライセンスのおかげで学資は出るし、今は、家族に仕送りすら出来る立場だ。

ハンターに国境はねえが、俺の家族にはばっちりある。厳然として存在する。
俺の育った国は豊かな先進国だが、俺は移民の出身だ。親は故郷で食い詰めて、俺が生まれる前にこの国に来た。暮らしは楽じゃない。
だけど、まだこの国に普通に住めるだけまだいい。
俺の親戚はそうはいかない。相次ぐクーデタ、テロ、だけどどこにも逃げられやしない。
失業率50%みてぇな国に閉じ込められたままだ。


俺が医者になろうと思うきっかけをくれた親友も、やっぱり移民の子だった。
貧しいまま死んでった。あいつんちも親が出稼ぎでこの国に来たクチで、掃除夫だとか家政婦だとかで汗水たらして働いて子供を育てたんだけどな。
金持ちだけがのし上がれる世の中だ。

金、金は大事だというと、育ちのいい奴らは顔をしかめる。
そりゃそうだろうな。俺も解るよ。出来ればそんなこと、言いたくねぇ。
だけど、金があると何が出来るか考えてみろ。
物が買える?
…他には?え、思いつかない?

あんた、豊かな国で育ったろ。
いや、俺もそうっちゃそうなんだけどさ。

金があると、遠くへ行けるんだよ。
距離もそうだが、もっと別の意味でもだ———例えば、広がるのは可能性。選択の幅。
高い金払っていい学校でた奴がどうなったか考えてみろ。
引く手あまた、よりどりみどり。それもやりがいのある仕事が待ってる。
そして金の分だけ安定した生活、ふさわしい配偶者。可愛い子供。

でかい多国籍企業に入って上りつめたやつが何してるか考えてみろ。
ジェットセット、自家用飛行機、世界中飛び回ってるだろ。

その分時間がなくなるってのはあるけどな。
でもやつら、よりによっちゃあ時間も金で買いやがる。

故郷に送金するため、2時間も送金窓口の前で並んで待ってる奴を尻目に(世の中には銀行口座なんて持てないほど貧しい奴は五万といる)、ネットで指先一つで、巨額の金をご送金だ。
しかも口座にゃ金が余ってるから、お客様あなたはVIP口座をお持ちですねそれなら外国送金も無料で行えますとか、メッセージがウィンドウに出たりしてな。

更に辛いのは、その嫌われ者の金持ちがいいやつだったりすることだ。
株式投資するみたいな感覚で、慈善期間に巨額の金を一瞬で振込み、その金で遠い外国に学校建ったり病院建ったりしやがる。
例えば善意の小市民が、そんな異国の貧困など知る機会も無くテレビの前でぼんやりしてる間に物事が奴らの力で動いちまう。

(もちろん、奴らの金の使い道をちゃんと見張る必要はあって、それはむしろ庶民の仕事だったりする。金持ちはたまにトチ狂うからな。でもそれだって、明日自分がリストラかもとか心配してれば、無理だ。)


金では全ては買えないなんてこと、誰にだって解ってる。
だけど、金で動かせてしまうモンのことも考えてみてくれ。
それに踊らされ、打ちのめされ、這いずり回るしか無い人間もいるってこと、一瞬でも想像してくれ。
頼むよ。
黙って眉をひそめて良識ぶる前にさ。


俺の死んだ友だちは医療保険に入ってなかった。
貧しい奴なら当然受けられる生活保護とかも、親御さんが手続き出来なくて受けてなかった。なんでって、言葉はおぼつかねぇし、書類はロクに書けないし、仕事は忙しいしでとても無理だったんだ。
周りが助けようとしたころはもう遅かった。






俺は今、夢の途中に居る。
あれほど望み、焦がれた道の途上を歩んでる。

だけどときどき、前に進もうとすればするほど、目標が果てしなく遠のくような気がすることがある。  


ハンターになって、医者になって、これで何かが変えられるのかな?

…だといいんだけどな。

時には立ち止まり、振り返り、考える。



だけど答えはいつも一つ。

———そう信じるしか無い。

だって俺は動き始めてしまった。
もう後戻りは出来ねえんだ。





そしてまた、歩き出す。




超ねつ造…。いや、なんかレオリオってけっこう苦労人?と思ったので。
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