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雑念手帳

サイトの日記ですが、同人サイト訪問者様用に公開されたJUNK妄想雑文メモ置き場兼ねてます。「何となくこのキャラのイメージで出てきた妄想だけど限定はしない」系の小説未満な小話がごっちゃりです。

「えいがのおそ松さん」感想(ネタバレ有)
「えいがのおそ松さん」について。特に高橋のぞみさん論。
(映画見たあとすぐに書いたのだけどしごとで投稿遅れました)

高橋のぞみさんについて「腐女子も含めたファンの目線に近いキャラクター」とみなして、ファンへのラブレターとして映画を捉え、評価する(あるいは批判する)感想を最初に見たときは、正直とても驚いた。自分にはその発想がまるでなかったから。

だけど、パンフによると高橋さんはまさに「お客さんの立ち位置に近いキャラクター」として作られたとある。だから、なるほどそういう感想で当たっているのかと気づいた。むしろ自分にまるでその感想が出てこなかったのは何故か、を考えなければならないようだ。

私がそう反応してしまったのには理由がある。高橋さんは、ある視点からみるととても「上手く描けている」キャラだったからだ。だから自分は彼女をメタ的な存在というよりは、完全にお話の中の人物としてみてしまっていたのだ。




冒頭と最後に出てくる高橋さんは重病そうである。だから私は高橋さんを「死にゆく人」として見てしまい、そのイメージから離れられなかったのだ。そして映画の描写は、そう捉えても不自然でないかたちで高橋さんを描いているようにみえた。
まず、冒頭で映る病室の白さ、雰囲気は、自分が実際に入院していたことのある病院の緩和ケア病棟(ガンの終末期の患者が入る病棟)をドア越しに見たときの色調にとても似て見えた。

次に、高校時代に元気な高橋さんの歯がかけていて、身長はやや低いこと(ただし、最後に一人だけで精神体?となって登場するときはきれいな歯をしている)。
歯が欠けているのは、パンフレットによると、愛嬌のある感じを出すデザインとの説明だったが、正直、最初見たときぎょっとした。

永久歯が生えそろっているはずのハイティーンなのに歯がかけていて背が低い。現実的に考えると、彼女は大人しそうな女の子なので、DVを受けて抜けるか、経済状態が悪くて歯医者に行けないなどの理由がないとそうはならない。あるいは、重病を患い、一度克服してるタイプの人という可能性もある。特に小児白血病など、成長期に強い薬を使うので身長が伸びづらくなる。歯も欠けることがある。そして寛解しても再発する場合は多い。

卒業式を控えた高橋さんは「しばらく遠いところに行く」と手紙に書いていた。予期していたこと、はじめてのことではない雰囲気がある。私は上に書いたような先入観があったので、卒業を真近に白血病のような持病の再発がわかって、療養を余儀なくされる事態となったのではないか、という想像をしてしまった。

考えすぎなのだろう。ただ、言いたいのはとりあえずそう考えると、私自身の体験や知識からしても、色々つじつまが合ってしまったのだ。

いずれにせよ、高校卒業から数年経って大人になった彼女は健康ではない。そして同窓会の参加者からは完全に見えない側にいる。ニートどころではない。働けてないし大学あるいは専門学校にも全くいっていないかもしれない。そもそも命が危ないのかも知れない。結婚だの出産だのというどころでもない。同級生の幸せマウンティングから遠く離れて、いわば彼女はこの世のカーストの外にいる(というふうに見えた)。

高校生の六つ子たちはニート予備軍の童貞だったが、それでも無事生きていた。何もないけど活力に満ちていた。高橋さんのような状態の人には、何よりもそんな六人の姿が力強く、眩しかったとしても何の不思議もない。

すべてをカーストの外から見ている彼女は「これでいいのだ」を最も力強く言える人だ。何があったってこれからもあなたたちは生きていて、眩しい。そのままでいい、と。

私がこう思うのは、大人になったむつごたちが、どうしたらいいかわからないという過去の自分たちに対して、やはり「そのままでいいんじゃない」と言うからだ。つまり、赤塚スピリッツの「これでいいのだ」を一人一人が過去の自分に告げている。
そして、六つ子達全体を包み込むのは「あなたたちはそのままですてきだった(=これでいいのだ)」という高橋さんのまなざしだ。ただ、最後に「これでいいのだ」を彼らに告げられないのは心残りだった。それを果たしたかった。

そして、一人横たわる高橋さんを肯定するのは、作品世界そのものだ。あのトト子が「高橋さんがいない」という。何も知らないが、彼女のことを覚えている。黒猫が枕辺に現れ、魔法のような力で六つ子と彼女を結ぶ。
赤塚作品世界は、一人で病と立ち向かう人生に「これでいいのだ」と折り合いを付けようとする高橋さんに寄り添う。

「これでいいのだ」のメッセージを届ける物語として、実に美しい構造をなしていると思う。美しすぎて、ギャグとしての側面はやや損なわれているかも知れないけど、でもそこが自分はよかった。
これが、映画を評価したくなる理由である。


高橋さんの元ネタについては自分は何も知らない。彼女の家の表札に「佐野」とあったのが気になっている。これもよくわからなかった。
あと、関係はないかもしれないが、この記事を書くために調べていて、あることに気づいた。

おそ松さん一期の放映が始まる時期(2015年10月)に、血的の難病で亡くなった松来未祐さんという声優がいる。
彼女はおそ松役の櫻井孝宏氏とイヤミ役の鈴村健一氏と共にラジオ番組を10年近くやっていた(https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1446951585 )。神谷浩史も彼女のことをよく知っており、「まつらい」と呼んでいじったりしたそうだ(https://sokuhousaishin.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03-3)。
映画と直接関係はないのだろうけど、「松」にひっかかったので、ひとまず書いておく。


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