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douleur spirituelle

エンエド。珍しくエンビ攻。レイプを示唆する描写があります。R16。

すきだよ、と言った途端それは起きた。

「言っただろ。そういう話は興味ないんだ。」

「…それよりさあ、どうせだから、もっと楽しいことしようよ。」

「?」


にっこりと口元は微笑み、頬は上気していて、
だが見据える瞳は鋭くて、
きらきらと、奇妙な熱気を帯びて光っているのだった。


答える間もなく気がついたら地にふしていた。
背に残る痛みに、蹴りたおされたと気づく。




くみしかれた瞬間、何ともいえない思いに胸を貫かれた。

怒りではなく、
恐怖でもなく、



————悲しみ。


わかったからだ。

通じないということ。

どうやっても、何を言っても、



言葉が届かない。



蹴られた背中が痛い。
押し付けられた頬が冷たい。


——ねえ、これでも愛せる?


無言の問いに答えることも出来ず、


「……………………。」



出来たのは、受け入れることだけだった。










身体は痛かった。


自分の声じゃないみたいなすごい悲鳴が出た。
抉られ、裂ける。そのうち部分的に麻痺、痙攣。押さえつけられ、揺さぶられ、床に金属のすれる音。


うつぶせて必死で耐える。すると奴は覆い被さったまま後ろからぐい、と髪の毛つかんでこっちの頭を持ち上げようとするんだ。
何だ、顔が見たいのか。いやらしいやつ。

「ねえ、今、どんな気分?」

訊いてきた。

「痛ぇよ…。」


答えてやったが虫の息みたいになってて、喉は枯れてカラカラ。


「おチビさんは——初めて?」


最初意味が理解できず、息も絶え絶えに考える。


初めて?
初めての何だ。


「痛い?かわいそうだねえ。初めてなのに。」

ああそうか、性交。

「でもどうしようもないよねえ。馬鹿なことを言うんだもの。」

「だからこういうことしたくなっちゃった。」

「…ねえ、知ってる?おチビさん。残酷なことって……起きるんだよ?」


(人間、絶望を教えてやる。)


「すきだなんて言っちゃって、やさしくされると思ったら大間違いなのさ。」


(これから先、思い出すたび、最初の記憶は血の色。)



再び深く侵入され、思考がとぎれる。うめき声が出た。



初めて?

————いや。


違う。強烈な既視感。でもどうして。

髪の毛をつかむ手が離れた瞬間、わかった。


似てるのだった。
似てないはずなのに、全然違うはずなのに、つながる記憶。

神経を接続するときの、内側から蝕まれるような、あの、
外からの痛みとは明らかに違う、苦しみ。

(それが毎度、ひそやかな罪と恥辱の意識をはこんでくるからだ。)
(皮膚と神経じゃない、もっと奥、深い部分が灼けただれたように、疼く。)
(何度も何度も、そのたびに新しく繰り返す。)


突然、笑いたくなる。


そうだ、俺はこれを知っていた。
全然違う形で、だけど知っていたんだ。

体は無垢なのに、もう侵されていた。知りすぎていたのだった。



魂の、痛みを。





相手が動きを止める。様子をうかがう。

「あれ、何だ。笑ってんの?」

問いには答えない。 

「…いやがってたくせに、ヤられて、よくなっちゃった?」

答えずに、ただ、痙攣するように笑い続ける。

喉の奥、むせて咳き込んで、

最後には少しだけ、涙。


「…ちぇ。」


何の舌打ちなんだろう。

目を閉じたまま、濡れた頬を晒していた。

すると、近づく気配。




泣き顔、舐められた。

ゆっくりと生暖かく、まるで口づけるように。







(本当は、食べてしまいたかった。)













いつまでも全ての記憶が鮮やかなお前とは違い、時は人間を遠くへと運び去る。
例えそれが絶望であっても、いつかは遠くなる。

だから時が経ったとき、俺は全てを振り返り、こう思うだろう。



あのとき俺にお前が教えたのは、お前自身の絶望だった。
俺が感じた痛みは、お前がもっとずっと、よく知っていた痛み。

お前にとって世界は残酷でなければならず、優しさは裏切りで返されねばならなかった。
憎み続けるために、復讐し続けるために。
それほどまでに、お前が身の内に抱え育んできた世界への憎悪は、苦しみは深かった。





そして、ついにはそれが、お前自身をも消し去ってしまった。





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