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雑念手帳

サイトの日記ですが、同人サイト訪問者様用に公開されたJUNK妄想雑文メモ置き場兼ねてます。「何となくこのキャラのイメージで出てきた妄想だけど限定はしない」系の小説未満な小話がごっちゃりです。

イノセント(1)
現世舞台、ロンミツ前提ワタミツというわけのわからん設定で、しかも二人は中高生です。映画版ラストが基本ですが小説版のネタも微妙に入ってます(宮原の存在など)。ロンメルは現世に転生しているという設定ですが幻界の記憶は一切なく、全くの他人として美鶴の前に現れます。ハルネラ設定が入ってくるかはまだ未定ですが、話の構造上不可欠なわけではないので、あまり扱わないでしょう。心の広い方だけご覧下さい。
1.青い目


俺は時々不思議な夢を見る。ファンタジー小説みたいな異世界で長い旅をしている夢だ。それは幻のように儚く、目の前で美しい映像を見ているみたいな気分で俺はそれを追っている。

俺は俺自身をも目で追っている。
最初は誰だか分からなかった。長いローブに黒装束に近い色彩、フードをかぶった小さい姿が長い道をてくてくと歩いていくのをぼんやりみてた。一人でどこまでも。


一度だけ三谷にそれを話したことがある。もうずっと前のことだ。
三谷はぽかんとした顔をして、一瞬その瞳をよくわからない表情が走り抜けた。その後ちょっと笑って言った。まるでRPGだね。







アルバイトの帰りに、俺はよく本屋に立ち寄った。
都心にあるその大型書店の洋書コーナーが結構好きだったのだ。
最近割と複雑な内容も読めるようになって、少しずつ英語の本を読んだりしていた。
例の夢のことをぼんやりと考えていたせいだろう。その日は洋書コーナーの中の一角、ファンタジー小説のスペースに来ていた。

Harry Potter, Never Ending Story, Lord of the Ring.....
どこかで見たようなタイトルを目で追いながら高い段にある小説を取ろうとしたときだ。ちょっとバランスを崩して隣にいた人に肩が触れた。

「あ…Excuse me」
「Oh, it's okay.」

ふと視線を感じて振り向いたら目があった。青い目だな、俺は思った。背の高い金髪の、見るからに「外人」というタイプの男だった。どこぞの外資系の会社に勤めてでもいるのだろう。広い肩幅のがっしりとした身体を上等そうなスーツに包み、年齢は30代半ばくらいにみえた。

「あなたの英語の発音、きれいですね。」

少し鼻にかかった発音だが相手は流ちょうな日本語で答えてきた。なんだ、しゃべれるのか。

「ありがとうございます。」

あっさりと俺は日本語に切り替える。

「英語を話す国にいた事がありますか?」
「ええ、少しだけ…小学生の頃に。」
「ああ、やっぱり。そうだろうと思いました。」

確かに俺は何となくこういう音だなというのが分かる。
思えばその通りにつるりと音が出る。ただ、同じように話すと学校では浮くので、英語の授業中当てられたらわざとカタカナ読みで教科書を読んでいる。

不思議な話だ。俺は確かに小学校の時アメリカに少しだけいて現地の学校に放り込まれていたが、まるで馴染まず最低限しか話さず、その後日本に帰ってからは話す機会がなかったから自分でも忘れてしまったものと思っていた。
だけど俺の知覚しない俺、いわば身体——が英語を覚えていたわけだ。

ヒトというのは不思議だ。そのつもりがないのに、勝手に身体が覚えている、そんなことがいくらでもある。
ときには余分なものですら。
…いや、よそう。このことを考えるのは。

「So, where have you been? In the States?」
「ええ、住んでいたのはアメリカですが…。あの、僕はあまりしゃべれないので。」
「でも、わかっていますね。私の言うこと。」
「聞こえるけれど、言葉が出てこないんです。」

実際、そうなのだった。聞くのは解るが、咄嗟には簡単なフレーズくらいしか出てこない。

「なるほど…でもそれなら、すぐに思い出しますよ。」

話し好きな外人だな、俺は少し煩わしくなり視線を本棚に戻した。知らない人間とちょっと話し過ぎたと思った。
相手もすぐ立ち去るだろうと思った。
だがいつまでたっても視線を感じる。何だ?気持悪い。
思わず根負けして向いてしまったら、目が合った。何の屈託も無くやたらさわやかに相手は微笑む。いわゆる外人スマイル——と俺がガキのころから名付けているところの、見知らぬ他人相手に日本人なら多くが感じるようなはにかみやら躊躇いやらが微塵も伺えない笑い方をしている。

「この下のオープンカフェで少し、お茶でもどうですか?」
「…は?」

一瞬ぽかんと口を開けたまま見上げてしまった。男はまだ微笑んでいる。
これってまさか、

「天気もいいし、空も青い。せっかくだから少し話でも。」
「い、いえ、俺はこの後用事があるので。」
「そうですか、それは残念。」

…ナンパ、されたのか?

唖然としている俺の前、後ろめたさ等一ミリもなさそうな屈託なさで、Have a nice dayと挨拶もさわやかに男は立ち去った。




(2)に続く
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